便秘の定義
長い時間排便がなくお腹が張って苦しい、排便してもお腹に残便感がある、便が固くて出すのが大変といった状態が「便秘」です。
排便が毎日ないから便秘というわけではありません。人によっては、2~3日間隔の排便でもスッキリ出し切れる方もいらっしゃいます。
つまり、排便のリズムが規則正しく排便後に残便感などがなければ、便秘ではないと言えます。
便秘の種類について
日本人は腸の病気ではないが便秘にかかっている方が、20人に1人いると言われています。また、年を重ねただけ便秘で悩む方は増える傾向にあります。
便秘は、大きく下記の3つに分類されます。
出口でつまる直腸性便秘
直腸性便秘の方は、「便意を感じない」、「便を出したいのに出ない」、「タイミングを逃すと出なくなる」といった症状が現れます。腸の動きは正常なので肛門付近まで便は移動してきますが、便が固いため出口で引っ掛かってしまうのです。肛門から出る便は、ペットボトルの蓋ほどの太さまでなら問題なく排便でき、柔らかい便であれば形状を変化させて出すことができます。出そうなのに出ないのは、便が固いために起きています。便を柔らかくするお薬を服用していただきながら、治療していきます。
便が硬くなる弛緩性便秘
弛緩性便秘は、便を送り出す大腸の働きが弱くなることで起こります。
体内で消化吸収された食べ物は、大腸で水分を適切に吸収されます。人それぞれですが、食べて消化されてからおおよそ24時間で排便が起こります。ところが、大腸に水分を多く吸収され固い便になると、便を出しにくかったり、コロコロとした便になったりします。また、腹痛や固い便のせいで肛門が切れ、出血する場合もあります。
加齢や継続した下剤の不適切な使用により、大腸の働きが低下すること原因となります。
コロコロ便になるけいれん性便秘
ストレスなどで自律神経の乱れが生じて起こるのがけいれん性便秘です。ストレスや不安の影響を受けて大腸が刺激され、コロコロした便を排泄します。若い世代に多いのが特徴で、いつもは健康的な排便ができているのに、ストレスなどがかかると便が固くなってしまいます。また、腹痛を伴う場合もあります。
便秘が招く症状
腹部膨満
便やガスの影響を受け、お腹が張って苦しい状態を指します。便秘になると、腸内環境が悪くなってしまい、悪玉菌が増殖します。すると、腐敗物質が増え、悪臭のガスが出る原因となります。お腹が張るのは、腸菅に詰まりが生じていたり、ガスや便が通る道が狭くなる病気を発症していたりする可能性もあるので注意が必要です。
腹痛
大腸で滞った便やガスにより腹痛が引き起こされる場合があります。
便が出なくても腸は便やガスを排出する働きは継続しているため、腹痛は起こるのです。特に、左下にあるS状結腸周辺に、痛みを訴える患者様が多い傾向です。
内痔核
肛門の中の歯状線の内側にできたしこりが内痔核です。便秘で強くいきみすぎると、内痔核がうっ血を起こし、腫れたり出血したりする場合があります。内痔核が大きくなると、粘膜がたるみやすくなり、肛門の外へ出てしまうと脱肛が起こります。うっ血している場合、炎症を鎮める塗り薬を処方しますが、脱肛で粘膜がゆるんでしまうと手術する必要があります。また、内外痔核という塊が肛門の周りにできることもあります。
裂肛
肛門の入り口付近の粘膜が切れて、傷になったのが裂肛です。強すぎるいきみや硬い便が原因で、便の通り道が裂けてしまうと発症します。また、裂肛が何度も再発すると、肛門が狭くなってしまうので、病状が悪化しやすくなります。軽度の裂肛は塗り薬を塗り、傷の回復を待ちますが、慢性化して粘膜が繊維状になった裂肛は、手術を行う可能性があります。裂肛を予防するため、便秘にならないよう管理することが大切になります。
便秘を伴う病気
症状とその特徴 | 説明 | 疑われる主な病気 |
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不安や緊張がストレスとして腸に影響を与える | 過敏性腸症候群 詳しくはこちら |
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病状が進むと出血しやすい。便の通り道が狭くなる。検査で早期発見する必要がある。40歳頃~高齢者の患者様が多い。 | 大腸がん 詳しくはこちら |
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腸の機能にも病気の影響が出て、便秘しやすくなる。お薬の副作用の場合もある。 | パーキンソン病 |
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気分が落ち込む状態が2週間以上継続することで、日常生活に影響が出る。抗うつ薬の中に便秘の副作用が出るお薬がある。 | うつ病 |
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甲状腺ホルモンが低下し、全身の代謝が悪くなる | 甲状腺機能低下症 |
マッサージや食べ物など自分でできる便秘解消法
生活習慣の改善
起床後、朝ご飯を食べて、便意がなくても15~30分くらいにトイレへ向かいましょう。決まった時間にトイレに行くと、排便のリズムが整えられ、自然と便意を感じるようになります。また、体を目覚めさせるため、朝ごはんをきちんと食べることは大切です。この習慣を継続しましょう。
便意を逃さない
トイレに行くタイミングを我慢することで、便意はいつの間にか消失してしまいます。このタイミングを逃し続けると、直腸の働きが低下してしまい、便意を感じにくくなります。
便意を逃さないことで便秘予防に繋がるので、我慢しすぎないようにしましょう。
起きたら、
すぐにコップ1杯の水を飲む
起床後、腸を目覚めさせるため、コップ1杯のお水を飲みましょう。腸が目覚めて、活動を開始します。
食生活の改善
規則正しい時間に、しっかり3食食べましょう。食事のリズムを整えると、内臓の働きも規則正しくなり、便意も自然に感じるようになります。「3食を可能な限り同じ時間に食べる」ことが重要です。一人ひとりの生活習慣に合わせ、無理のない範囲で行いましょう。
水分
適量の水分を含んだ便であれば、排便しやすくなります。硬い便になるのは、腸で水分を過剰に吸収されたためです。そのため、便秘の方は、日頃から水分を多めに飲むことが大切です。
食物繊維
食物繊維は消化吸収されないため、水分もそのまま便になります。食物繊維を多く摂れば、便の量もおのずと増えるため、大腸が刺激されて自然な排便ができます。ただ、人によって不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のどちらが必要なのかが異なりますので、主治医に確認しましょう。
果物
食物繊維を多く含む果物や、果物の果糖が大腸を刺激したり水分を引き込んだりする作用があるので、便秘の方にお勧めです。さらに、有機酸(リンゴ酸、クエン酸など)を多く含む果物は腸の働きを活発にします。
脂肪
脂肪も便秘予防に効果があります。ただし、摂取しすぎに注意しましょう。
ビフィズス菌
便秘で腸に便が溜まると悪玉菌が増殖して、腸内環境が悪くなります。こうなると、便がさらに出づらくなる可能性があります。腸内環境を整えるには、善玉菌を増やす必要があるので、ビフィズス菌が豊富な食品(ヨーグルトなど)を積極的に摂取しましょう。
オリゴ糖
オリゴ糖は便秘の改善に効果を発揮すると言われる機能性表示食品です。オリゴ糖はビフィズス菌を増やし、腸の動きを活発化させる有機酸を生み出します。さらに、腸内環境を悪化させる悪玉菌の活動を抑制する働きが期待できます。
適度な運動
運動すると血液の巡りが良くなり、大腸が刺激されて活発化します。腹筋を鍛えれば、いきむときにその筋肉が役立ちます。ストレスが原因の便秘も、運動により改善が期待できます。大変なトレーニングをたまにするのではなく、毎日続けられるような軽めの運動を継続しましょう。
マッサージ・指圧
腹部をマッサージすると腸の動きが活発になり、便の移動を促す効果が期待できます。お腹の周りをマッサージしましょう。また、腰付近を指圧することで腸へ刺激が伝わります。
ストレスを上手に解消
ストレスを感じると自律神経が乱れ、腸の動きも低下して便秘になる可能性が高いです。ストレスを溜めないよう心掛け、疲労を溜めない工夫をしましょう。また、ストレスと関係がある過敏性腸症候群は、ストレスを上手に解消すれば症状が改善する場合もあります。
便秘の検査と治療
便秘の検査
便秘の状況を知るため、便の形、腹痛があるか、生活習慣などをお伺いします。便秘に関係する他の病気(糖尿病、甲状腺低下症など)の可能性がある方は、血液検査を行います。レントゲン検査では、腸の中の便の量、ガスの有無、大腸の胃カメラ検査では内臓に病気(大腸がんなど)がないか、腸が捻じれていないかなどを調べます。
大腸カメラ検査をおすすめする方
下記の症状に思い当たる慢性的な便秘の方は、内視鏡を使用した検査をお勧めします。
- 大腸カメラ検査を受けたことがない50歳以上の方
- 血が混ざった便が出る方
- 細い便が出る方
- なかなか便が出ないと感じている方
- 貧血をお持ちの方
- 体重が減った方
便秘の治療薬
- 浸透圧性下剤(便の水分量を高め、便を送り出しやすくするお薬)
- 刺激性下剤(腸の粘膜に刺激し、排便を促進するお薬)
- 胆汁酸トランスポーター阻害薬、上皮機能受容薬(発売されたばかりのお薬)
- 消化管運動賦活薬、漢方(腸の動きを促進し、便を出口に移動しやすくするお薬)
薬局で購入しやすいのは、刺激性下剤や浸透圧性下剤で、病院で処方される機会も多いお薬です。高い効果が期待できる刺激性下剤は依存性が高く、服用を継続すると効果がなくなってしまいます。すると、自分で下剤の量を増やしてしまい、体に悪影響を与える場合があります。人によって便秘の種類は異なりますので、自分の症状に合ったお薬を服用することが大切です。最近発売された上記のようなお薬も処方できます。柔らかい便にするために小腸から水分分泌を促したり、腸の運動を活発化させたりして、便を送り出すことができるお薬です。今服用しているお薬に効果を感じない方は、当院にご相談ください。